「柳絮」
ひとところにない ふわりと 飛んでいく 白い影。
「でも心は誰のもの 心はあの人のもの」
そんな風にして 遠い国まで飛んできた。
知らない国の道ばたでふわふわと転がって。
体を覆っていた白い綿は少しずつ黒ずんで消え、
最後の水分の一滴が カラカラと音を立てた。
こわくなって、土から思いっきり水を吸い上げたら
体がとてつもなく重くなって 真っ暗闇につつまれた。
これで
もう、あなたを探せなくなった…
私の足にはたくさんの根が生えて
体を通り抜ける春の風は 私の涙を雪にする。
でも 心は誰のもの?
…そんな風に言うなら、
せめて 私の腕に鋏を入れて
あなたの机の花瓶にいけてください。
そうすれば、あなたのノートを
あなたのきれいな字を
さらさらと撫でることができるから。
「柳絮」:りゅうじょ 柳の種や綿のこと