朔の夜 繊月 眉月…そろりそろり 足音ころして。
呼吸させるように、循環させるように、
永遠に生い茂る森を
永遠に刈り続ける約束をしたと言っていた。
あなたが両手に咲かせる
美しくて細やかな花はとても良い香り。
ふいに 頬に触れてしまった私の手は わたしを失ってしまった。
そのことに気付かないふりをして、
あなたの両腕に咲く桂花をひとかけら味わった。
弓張月 十三夜月 待宵月…月が一番大きく目を見開いた夜には、
私は森に咲く小さな花を残らず摘み取って
食べ尽してしまっていた。
永遠に、花々を失った森の枝葉を刈る
あなたを想う。
小さな桂花の むせかえるような強い香りを思い出して。
桂男:仙術を学んだ罪で、月宮殿で1500mの桂の木を刈っている。
桂の枝が刈り込まれると月が欠け、枝が茂ると月が満ちる。
桂の木:中国では金木犀・銀木犀のことを指す。
朔望月:月の満ち欠けの1周期。満月〜次の満月までの期間(約15日)